プロダクト・組織・経営・自分軸で振り返るLAPRASの2020年

Hiroki Shimada
Dec 21, 2020

2020年も残り少なくなってきた。世界的にはコロナ恐慌に見舞われた1年だったが、LAPRASとしては資金調達や執行役員陣変更、新サービスのリリースなど良いことも大変だったことも盛りだくさんの1年であったので、プロダクト、組織、経営、そして自分という4軸でなるべく見栄を張らずオープンかつ赤裸々に振り返ってみる。

プロダクト:LAPRASを軸にしっかりと成長できた1年

2019年4月10日にリリースしたC向けLAPRASであるが、これはリリース当初から順当にユーザーを獲得して、今年の9月には累計登録ユーザー数が1万人を越えた。

LAPRAS 累計登録ユーザー数の変化

4−6月はコロナの打撃を受けたものの、サービスを通じて発生したマッチング数(内定受諾数)は今年の始めと比較して大きく伸びた。これはLAPRASの成長も起因していて、LAPRASでアクティブなユーザーが増えるほどにマッチング数も大きくなっている。

LAPRAS関連サービスで発生したQごとの内定受諾数(12/11時点計測)

C向けのLAPRASは今後もLAPRAS全体の成長の軸となっていく。今まではLAPRASユーザーをB向けのLAPRAS SCOUTというサービス一本でマッチングしていたが、今後はフリーランス向けサービス LAPRAS Freelanceや11月公開したLAPRAS JOBLAPRAS CAREERといった形でより広い層に向けてマッチングの面を増やして、総合的なマッチングプラットフォームを作っていくという成長戦略だ。

この1年は、ユーザーベースを拡大し、マッチングの面を増やしつつLAPRAS SCOUT自体のマッチング力を上げ、プロダクトとしては堅実に成長できた1年といえる。

組織:30人の壁に立ち向かった1年

LAPRASは組織としてちょうど30人を越えようとしている人数規模で、ホラクラシーを相変わらず続けており、ホラクラシー自体はいろいろな利点欠点を理解した上で使いこなし、この人数でもワークしている。しかし、その一方で組織が30人に近づいてくると、10, 20人のときに起こらなかった様々な問題が出てきた。

  • 1度全体周知するだけでは組織の隅々まで伝わらない
  • ビジョン・ミッションの理解や解釈・共感度が人によって分かれる
  • 初期で守られていたバリューが守られなくなってくる
  • 初期メンバーと中途メンバーの熱量のギャップ

このような問題に加え、自分1人では組織全体の状況が見えないので、自分は他のメンバーから聞くことでしか現場の状況を把握できず、現場感がどんどんなくなっていき、自分の言葉も昔以上にメンバーに伝わりにくくなっていると感じた。いわゆる「30人の壁」などと呼ばれている現象で、2〜3年以上いた初期社員を中心にいままでほとんど出なかった離職者も発生してしまった。会社として目指したいことはあまり変わっていないのに、事業モデルやフェーズが変わったことによって目指すゴールが変わってしまったと感じさせてしまった部分もあった。これは、「目指すものはなにか」というコミュニケーションを絶やさないことで解決できることでもあるので、非常にもったいないことだったと思う。

そこで、1年の中で2回ミッションを変更し、バリューも変更して、浸透のさせ方を改めた。そして、ミッションへの言及や解釈の議論、事業を通じたミッション実現の方向性を語る場をとにかく増やし、一枚岩となるべく「ワンチーム」という方針と銘打って会社としての方向性や戦略を頻繁に意識統一する場を @320KZCD と一緒に作った。HR面では組織サーベイで心的安全性の低下などの課題発見をする仕組みを作り、ランニング・リーンの思想に基づいて評価・報酬制度も2,3回作り直して、より優先度の高いプロジェクトやインパクトのあるプロジェクトを評価できる体制にした。

その甲斐あってミッションは徐々に浸透していき、離職はひとまず落ち着き、新規での採用も開始している。反省も多かったが、組織に関しては学びが大きな1年であった。

経営:コロナ第一波を耐え抜き、来年に向けて筋肉質な体制を整えた1年

LAPRASは9月にウィルグループからの3.5億円の資金調達を発表したが、調達の活動をしていた時期がちょうどコロナの第一波(3〜5月)で、当時は感染者数こそ今より少ないものの、先行きが見えないため状況の不透明性が今以上に高かった。採用というサービス領域はコストカットの対象になりやすいため、企業もVCもなるべく財布の紐を固くし、事態の経過を観察するという状況で、調達は簡単には終わらなかった。

自分にも組織にも不安は常にあったが、その機会があったおかげで、支出を片っ端から見直して、削れるところを削り、人の配置もパフォーマンスも徹底的に見直して効率化につなげることができた。我々自身もコロナで先行きが見えなかったので従業員の雇用を守れるか不安だったが、結局の所雇用には手を付けずになんとか調達までこぎつけることができた。

アスリートの室伏広治は

弱い負荷しか体験したことのない人間は、強い負荷に耐えられない。「負」に対する免疫を作るためにはどん底を恐れてはいけない。いやむしろどん底をともにすべきだ。

という言葉を残しているが、自分もまさにこの経験を通じて強い負荷を経験し、その免疫を得ることができたように思う。組織はある意味コロナ禍のおかげで無駄のない筋肉質な組織体制となり、来年の成長に向けた資金・体制・メンタリティをしっかりと構築できた一年にできたと思う。

自分:Comfort Zoneを抜けた1年

よく、「自分より優秀な人を雇え」という標語を聞くが、この言葉ほど簡単そうに見えて難しいことはない。また、実践できている人もそう多くはないように見える。この言葉においては「優秀な人を雇う」ことよりも「自分より優秀な人」というところがポイントなのだ。「自分より優秀な人を受け入れる」というメンタリティを持つことが、そういった人を雇うこと以上に難しいことが多い。つまり、これは自分のやっていたことをそれ以上のクオリティで代替されていくので、感動的であるとともに辛くもあり、一部のコントロールを失うことになる。ときに自分の居場所や仕事がなくなつことにつながり、自分のやるべきことやミッションを常にアップデートしていかないといけない。

しかし、それによって会社としてのケイパビリティが自分という領域をはみ出して、じわじわと上がっていく。自分のやってほしい事をやってくれる人やハンドリングしやすい人(たとえば年下のインターン生や同世代の友達)だけを雇っていては、自分の思考の枠をはみ出すことはできない

自分は、幸いにもこの教えを実践することができた。10月に執行役員体制の変更を発表したが、そのどれも自分より優秀な人達で、自分の考えられないことを考えてくれる。創業メンバーも経営陣からは降りたが、今もなお組織に居続けてくれるのは「自分より優秀な人を雇え」という教えが重要だということを実感しているからだと思う。そのような人と一緒に仕事をしていると、ときに耳が痛くなるようなフィードバックをもらったり、自分とは違う仕事ぶりにふれることで、Comfort Zoneを強制的に追い出される。これからも自分をComfort Zoneから追い出してくれる人に感謝しつつ、そういう人と一緒に仕事をしていこうと思う。

人間、辛い時が一番成長するのだ。負荷がかかることでまたさらに強い負荷に耐えられるようになる。コロナ禍に見舞われたこの1年、特に経営者にとっては皆辛い1年になったと思うが、それ以上に成長につながる1年になったのではないだろうか。来年の動向はまだ見えないが、今年でしっかりしゃがみこんだ分、大きくジャンプをしたい。

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Hiroki Shimada

CEO at Polyscape Inc. / Producer & Director of MISTROGUE / ex CEO at LAPRAS Inc. / MSc in Artificial Intelligence at University of Edinburgh