ホラクラシー憲法を5分で理解する

Hiroki Shimada
6 min readAug 10, 2019

前回執筆した ホラクラシー組織への誤解と本当の意味 では、「ホラクラシー組織」という言葉が「ルールがなく、フラットで上司がいない組織」のことではないということを書いた。ホラクラシーとは、ホラクラシー憲法という組織に関する法律に基づいて組織運営をおこなうフレームワークのようなもので、いわば組織構造のOSのひとつだ。ホラクラシー憲法は翻訳すると3記事にまたがるほど長いもので、これを理解するには骨が折れるため、未だその実態が何なのか理解されていないのが現実だ。

そこで、今回の記事ではホラクラシー憲法におけるルールや機能をわかりやすく箇条書きでまとめていく。LAPRASのホラクラシー公開組織図を参考にすると理解が深まるだろう。

基礎の基礎

  • ひずみ(英語だと Tension)とは、理想と現実のギャップのこと。ホラクラシーは、組織内のひずみの最小化を目指している。
  • ガバナンスは、「誰が何をミッションとしているか」「誰にどんな権限があるか」「誰が何をやらなければいけないか」という仕事の型。「誰がイベントの参加者管理をするかが決まってない」はガバナンス上の問題。
  • オペレーションは、ガバナンスに基づいて行う仕事の遂行。「イベントの参加人数が集まらなかった」はオペレーション上の問題。

ロール

  • ロールは、目的領域(ドメイン)・責務 の3つの要素を持つ。
  • 普通、一人の人が複数のロールを担い、複数人の人がひとつのロールを担うことある。
  • 「責務」はそのロールがやらなければいけないこと。たとえば、オフィスインテリアロールは「オフィス家具の選定を行う」を責務にもつ。
  • 「ドメイン」は他のロールが犯してはいけない領域のこと。つまり、このロールが優先的に行使できる権限やリソース。たとえば、オフィスインテリアロールは「オフィスインテリア(内装・家具含む)の決定権」をドメインにもつ。
  • 他のロールのドメインにリソースを使いたければ、そのロールに許可を取る。同意の上ならOK。
  • 「目的」は目的。すべての責務やドメインはこの目的を果たす上で必要でかつ十分なものであるはず。
オフィスインテリアロールの目的・ドメイン・責務

サークル・任命

  • どんなサークルにも、Lead Link, RepLink, Secretary , Facilitator の4つのロールがある。
  • サークル内のロールのアサイン(任命)は、Lead Link が行う。ただし、Rep Link, Secretary, FacilitatorはLeadLinkがアサインできない。この3つは選挙で決まる。選挙は3ヶ月〜1年に一回やる。
  • サブサークル(サークル内のサークルのこと)のLead Linkは、スーパーサークルのLead Linkが任命する。
  • サークル内のロールの作成や編集・削除は、Lead Link でも行うことができない。
  • Facilitatorはガバナンスミーティングとタクティカルミーティングの進行を行う上、憲法やサークルのガバナンスに反した人にルールを守らせる法の番人的な役割をもつ。
  • Secretaryはガバナンスミーティングとタクティカルミーティングのスケジュール設定と召集を行う。頻度も決められる。
  • Rep Linkはサークルの代表者で、サークルの守り神的な存在。サークルの外で起きた問題をサークルのために解決してくれる人。また、スーパーサークルのガバナンスミーティングに出てサークルの不利益になるような提案を阻止する。
LAPRAS SCOUT サークルの組織図。サークル内の”Alg” , “Crawler ” といったサークルがサブサークルだ。

2つのミーティング

  • ホラクラシー組織には、憲法上で規定されたミーティングが2つある。ガバナンスミーティングタクティカルミーティング
  • ガバナンスミーティングでは、サークル内のロールの作成や編集・削除を行い、ガバナンス上のひずみを解決する。たとえば、「自分が開発の優先度を決めてると思ってたけど、他の人に勝手に変えられて計画が狂った。開発優先度をドメインにしたい!」とか。
  • ガバナンス上のひずみは、コアサークルメンバーであれば誰でも上げることができるので、ひずみが生じるたびに組織図が少しづつ進化していく。
  • 選挙もガバナンスミーティングのアジェンダのひとつとして行われる。
  • タクティカルミーティングでは、サークル内で走ってるプロジェクトやタスクを透明化し、日頃出たオペレーション上のひずみを解消する。たとえば、「再来週のイベント集客やばいので誰か助けて」「◯◯さん来週入ってくるけどオンボーディング予定ちゃんと入ってる?」「もっと今月はリードがほしいのでマーケロールがんばって」とか。タクティカルミーティングのプロセスはこちら
  • ガバナンスミーティング・タクティカルミーティングのメンバーは、サークルのコアメンバー全員。基本的にサークル直下のロールにアサインされてるメンバーはコアメンバーとなるが、LeadLinkに「お前ミーティングでなくていいよ!」と指定された人は、コアメンバーから外れてただのメンバーになる。Lead Link, RepLink, Secretary, Facilitatorは必ずコアメンバーとなる。

細かいこと

  • ロールに複数人メンバーがアサインされている場合、全員がドメインへのアクセス権を持っている。なので、ロールにアサインされている誰か一人に許可を取れば、そのドメインにアクセスできる。
  • サークルのドメインは共有財産のようなもので、上記と同様サークル内の誰でもアクセスできる。
  • サークルに設定された責務は、サークルメンバー全員の責務である。
  • たとえ、サークルのガバナンスや憲法に定められたルールでも、条件を満たせば破っても良い。これをIndividual Actionという。条件は簡単に言うと、「その選択が正しいという確信を持っていて、ルールを変えるのを待つ時間をかけられない」時。
  • 憲法の解釈が人によって分かれたら、そのサークルのSecretaryの解釈に従う。そして、スーパーサークルのSecretaryの解釈の方がサブサークルのSecretaryの解釈より優先される。

(5分で読めるかは怪しいが)これが、可能な限りホラクラシー憲法をシンプルに解説したものだ。そのため簡略化した部分も多いので、詳しい規定については憲法の訳版を御覧いただきたい。

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Hiroki Shimada

CEO at Polyscape Inc. / Producer & Director of MISTROGUE / ex CEO at LAPRAS Inc. / MSc in Artificial Intelligence at University of Edinburgh