職歴経歴書生成系HR Techサービスを徹底調査し、これからの職務経歴書のあり方を考えた

LAPRASでは、今後のサービス開発のために職務経歴書系のサービスや、転職者や人事の職務経歴書の利用の実態の調査を行った。今回は、その内容を公開するとともに今後の職務経歴書のあり方を考えてみようと思う。

なぜ職務経歴書系サービスを調査したのか?

LAPRASはすでにSNSを用いてエンジニアのポートフォリオが自動的に作れるという機能を持っているが、今年はこれをさらに拡張して、「職務経歴書の再発明」をテーマとすることにした。これは職務経歴書自体に代わるWEBレジュメを作ろうという事に限った話ではなく、その作り方や用途・使われ方・流通やインタラクションを含めた大きな意味での再発明を意味している。この詳細は後述する。

それにより転職時の負を解消し、自分をよりよく見せることのできる表現を簡単に作れるという価値を提供したいと思っている。新たな表現を得た先には、その表現を足がかりにその人にとって最善のマッチングを実現したいと考えている。

海外の職務経歴書生成系サービス

enhancv

enhancvによる職務経歴書(画像は同社WEBサイトより引用)

enhancvは、WEBサイト上のツールで美しいレジュメ・CVが作成できるというサービスだ。テンプレートベースで、様々な形の職務経歴書を作ることができる。料金は$10~$20程度。ビジネスモデルはこれとキャリアコンサルティングのみのようで、2014年創業でCrunchBaseによると累計調達額が約3000万円程度と、公開情報だけだと会社としてうまくいっているかは微妙に見える。

kickresume

kickresumeのテンプレート(画像は同社WEBサイトより引用)

kickresumeもenhancvに近い形のレジュメ作成ツールで、enhancvよりも多様なテンプレートを利用することができる形態となっている。価格は無料〜$8、人間による校正で$29ドルと、他のサービスよりも比較的手頃な価格だ。

SkillRoads

SkillRoadsの職歴書生成画面(画像は同社WEBサイトより引用)

SkillRoadsはサービスはAIによる自動生成を謳っており、レジュメのスコアリング機能なども持っているが、実際のところ作成の際はクリックされたタグやスライダーで自己申告したスキル情報がテンプレートに流し込まれるというだけで、全自動とはいかないようだ。メインのマネタイズはジョブボード(求人掲載)から行っているようだが、レジュメ作成自体も無料〜27ドルでマネタイズしているようだ。

AutoResume

AutoResume(画像は同社WEBサイトより引用)

AutoresumeはAIレジュメビルダーと称したサービスで、職務経歴書をサービス上で作成することができる。しかし、このサービスもSkillRoads同様AIとはいいつつもタグをクリックしたりすることで比較的簡単に職務経歴書が作れるというだけで、本質的には履歴書作成のツールといったところだ。

Rezi

Rezi(画像は同社WEBサイトより引用)

調査した中ではこれが一番AIチックで、入力したフリーテキストを解析して「◯◯が短すぎる」とか「このような表現を避けたほうが良い」と自動で校正提案をしてくれた上で、職務経歴書のテンプレートに流し込んでくれる。加えて、できた職務経歴書の魅力度などを採点してくれる機能もある。

Reziの履歴書採点(画像は同社WEBサイトより引用)

ビジネスモデルは履歴書を作成するCからとるモデルで、3ドル〜30ドルの価格帯が存在する。

人間による職務経歴書作成代行サービス

海外サービス調査のまとめ

このリサーチで見えてくるのは、生成の形がなんであれあ基本的には「職務経歴書」「レジュメ」「CV」という形をとっているサービスがほとんどで項目も共通しており、その形式そのものを破壊的に変えようとしているサービスは無いという事だ。このことから、日本でも今後Reziのようなよりスマートな生成ツールやスコアリングツールなどが出てくることが予想されるが、基本的には職務経歴書そのものがなくなったり、全く違う形式のものに置き換わったりするということはしばらくはなさそうだと考えられる。

これからの職務経歴書はどうなるか

これはLAPRAS SCOUTを利用しているユーザー企業(WEB, IT系が中心)の採用担当者68人に行った調査だが、76%もの人がエンジニア採用の選考でLAPRAS SCOUTのプロフィールを確認した場合でも職務経歴書の提出を必須にしているという。LAPRAS SCOUTのプロフィールはビジネスSNSを含めたSNS URLが乗っている場合が多いので、その場合でも職務経歴書の情報は必要のようだ。

HackerRankや日本でいうCodeIQやpaizaのようなプログラミング能力判定サービスやWantedlyのようなポートフォリオ型のサイトが発達した今でも職務経歴書は使われており、それらのサービスは引き続き利用されるが、あくまで補助的な立ち位置として使われるようだ。WEB系の企業でさえこの状況なので、大手のレガシーな企業ではより職務経歴書の比重は大きく、すぐに別な手段に代替されるということはないだろう。

また、職務経歴書の形態においてはPDFに限るという企業は25%ほどいたものの、紙に印刷されたものに限るという企業はおらず、書式は問わないという企業がほとんどであった。職務経歴書が必要な理由を聞くと、ネット上の情報だけではわからない詳細な実務経験を把握するため、というものが多かった。それがわかるのであれば、書式は構わないようだ。転職者の選ぶ作成の形式はGoogleDocsやワードやマークダウンのようなフリーテキストが強い。たしかに、エンジニアだと最近はGitHub上にマークダウン形式で上げているのを見ることも多くなった。

LayerXの福島氏は自身のnoteで金融業界のDXには4つのレベルがあるということを書いているが、自分はHRの世界でもこれに近いデジタル化が起こると考えている。

DX時代の金融機関における「経営のソフトウェア化」(福島氏のnoteより引用)

今は職務経歴の作られ方が、手書きや紙といったものからワープロやツールに移行したに過ぎない。しかし今後はさらにこのデジタル化のレベルは上がり、ツールがデジタル化するだけではなく、職務経歴書や人の能力を示すフォーマットが標準化され、ATSや採用ツールにもAPIで職務経歴書のデータがやり取りされるようになると見ている。入り口が標準化されれば、提出された職歴書をいちいち手入力してATSに入れたりしなくても自動で入力されたり、ATS内のデータと同定して過去の応募状況などを調べることもできる。これがさらに高度化されると、スコア化した能力を元に選考条件を設定して自動で1次選考を行ったり、自動で行われる面談サービスなどと組み合わせて面談を自動化したりすることが可能になるかもしれない。PDFのレジュメを取り込むとパーシングしてATSに入れてくれるという技術はBullhorn ATSなどがすでに実現していることで、日本でも当たり前になるだろう。WantedlyやLinkedinが使われつつも職務経歴書はおそらく今後も使われ続け、その作り方や連携方法、フォーマットはデジタル化していくだろう。

LAPRASはこのHR業務、特に職務経歴書のデジタルシフトの流れに一石を投じるつもりだ。

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CEO at Polyscape Inc. / Producer & Director of MISTROGUE / ex CEO at LAPRAS Inc. / MSc in Artificial Intelligence at University of Edinburgh

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Hiroki Shimada

CEO at Polyscape Inc. / Producer & Director of MISTROGUE / ex CEO at LAPRAS Inc. / MSc in Artificial Intelligence at University of Edinburgh