これからの採用市場が向かう方向とLAPRASのミッション変更の関係性
2020年の秋、LAPRASはミッションを変更した。今後LAPRASの向かう方向性と今後我々が採用市場で起こると信じていることを書いてみようと思う。
LAPRAS社のミッション変更
2020年の秋、LAPRASは自社のミッションを「すべての人に最善の選択肢をマッチングする」というものに変更した。
LAPRASはこれまで何度もミッションステートメントを変更していて、最初の「世の中のミスマッチを無くす」から、3回目の変更となる。目指しているものが変わったというよりは、これを本気で追う事業側と代表である自分の目指したいものとの齟齬を無くすためより正確な表現になった、という感じだ。
ミッションにおける「最善の選択肢」とは何か。これはいわばその人にとっての世の中の本当の「Best of All」である選択肢という意味で、自分の国や認知・手の届く範囲を越えた全範囲でのベスト、というものだ。
普通、偶然の積み重ねでしかこういったものにたどり着くことができないが、これをデータと技術の力で必然にし、誰もがそういったものにマッチングされるような世界にする、というのが我々のミッションだ。
最善の選択肢にマッチングされている人は少ない
ミッション変更に伴って、我々は現状のマッチングでどれほど最善の選択肢にマッチングされている人がいるのかを調べるため、独自調査を行った。あらゆる選択肢の中での「Best of All」の前に、まず自分が考えられる選択肢の中での「Best of All」の率を調べよう、ということで転職経験のあるエンジニア層1105人に、今の職場の働き方が最善かどうかをアンケートした。その結果が以下である。
「とても思う」と答えた人は全体の16%程度であった。「まあまあ思う」が50%で、転職によっていい環境につけた人は多くはいるが、「最善の選択肢」にマッチングできた人はまだまだ少ないと考えられる。本来の最善の意味は「あらゆる選択肢」での「Best of All」なので、これはあくまで近似にすぎない。本当の意味での最善はもっと少ないだろう。
そして、これを転職の時期で分けたときに、興味深い結果が得られた。
直近1ヶ月での「とても思う」の割合は6割を超える一方で、4ヶ月以降をすぎるとその率が14%まで下がってしまうのだ。これが何を意味するかはいくつかの理由が考えられるが、マッチング前後である程度認知と実際のギャップがあるということが考えられ、体験した上でもなおベストと言い続けられるのは10%程度にとどまるということだ。
我々が解決する課題を紐解くため、マッチングモデルというビジネスモデルについて考えてみる。
マッチングに潜む構造的な問題
マッチングモデルは、タクシーの配車やAirbnbのような宿泊、デーティングから結婚、採用サービスに至るまで、様々な領域に使われているビジネスモデルである。BUSINESS MODEL ZOOによると、マッチングモデルというビジネスモデルは以下のように定義されている。
マッチングモデル(Matchmaking Model)
マッチングプラットフォームが2個またはそれ以上の顧客グループをデジタル/ 物理マーケットプレイス上で結びつけ、購買関係を成立させるビジネスモデル。
マッチングモデルは様々だが、マッチングモデルには、限定要因が強いものと弱いものがある。マッチングの限定要因は、次のように定義する。
限定要因
一方にとって他方のマッチング対象が満たしているべき条件が存在していることによって、成立するマッチングの組み合わせが限定される要因
たとえば、タクシー配車は限定要因が弱いマッチングで、タクシーであれば何でも良いし、タクシーにとっても乗ってくれる人であれば誰でも良い。一方で、たとえば結婚は限定要因が非常に強く、男であれば誰でも良い、女であれば誰でも良い、というわけにはいかない。採用もまた限定要因の強いマッチング分野だ。
限定要因が強いマッチング分野ほど最善の選択肢にたどりつくのが難しい。限定要因が強いマッチング分野での構造的な問題として、双方から見たマッチングのしやすさ(いわば最善度合いの順位のようなもの)が可視化されておらず、マッチングを試みるまで良いかどうかわからないというものがある。そのため、マッチングは伝統的に実際に候補となるものを試していくという総当り的なものが一般的だった。たとえば採用の分野ではスカウトをバラマいたり、デーティングアプリが出る前はストリートナンパ(これは目的がちょっと違うので極端な例)したり、といった具合だ。
しかし、技術やサービスの発達でフィルタリングや可視化がすすむに連れて、総当たり的なマッチングからより質重視のマッチングに移っていった。現代のマッチングは、この進化の最中にある。
LAPRASは、最善に繋がれる新しいマッチングモデルを創る
LAPRASが目指すのは、いわばストリートナンパやバラマキスカウトの対極にある新しいマッチングシステムだ。それが実際どのような形をしているかはまだ我々にも未知数だが、おそらく個人と選択肢の情報を詳細に利用することによりある程度マッチングの成立率や選択肢や個人の市場価値が可視化され、無限の選択肢からより高い精度のフィルタリング・カスタマイズがされた選択肢を提供してくれるような機構だろう。
だから新しいミッションに基づいて、我々は質の高いマッチングの研究を開始した。先のアンケートもそのプロジェクトの一環で、現状の把握と、どのようなマッチングが最善性とユーザー満足度を高めるのかを探った。ミッション変更に伴って先日バリューを変更したが、最も重要なバリューとして位置づけられた「エンドユーザー・ファースト」に基づいて、エンドユーザーに圧倒的質のマッチングを提供して、圧倒的に勝つ、というのが大きな方向性だ。LAPRASからのマッチングが他のサービスのマッチングよりも良いもの(これは基準が様々だが、年収が高かったり、面白かったり、フィット感があるということ)にたどりつけるようになれば、自ずとプラットフォームとして成長できると思っている。
採用はバラ撒き型からCX重視型へ
技術の進化やサービスの多様化から大局的に見て、総当り(いわばバラ撒き型)型のマッチングから徐々に質重視型のマッチングに移行しつつあるが、このマッチング変革は、売り手市場になっている分野から始まる。
たとえばITエンジニアの市場がそうで、10倍以上あったIT系の職種の求人倍率はコロナの影響を受けて下がったが、それでも6倍以上を維持している(画像はhttps://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/ より)。そのような分野では企業が選ばれる立場になっており、転職後もほかからいつでも声がかかるという状態になりがちなので、候補者に良い体験(CandidateExperience, CX)をもたらせない企業やプラットフォームはどんどん淘汰されていく。CXは広い意味で入社後のエンゲージメントまで含まれているので、マッチングの質はいわばCXの一要素となる。
以前の記事でも触れたが、米国ではすでにこの流れが来ており、採用ツールの訴求も「たくさん採れる」から「良いCXを提供できる」に変わりつつある。(画像は各社ウェブサイトより引用)
バラ撒き型のプレイヤー(企業・プラットフォーム含め)や、マッチングの質を重視できないプレイヤー(たとえばフィーの大小だけで候補者を斡旋する悪質なエージェントなど)は、今後長い目でCX重視のプレイヤーに淘汰されるだろう。
我々は「すべての人に最善の選択肢をマッチングする」というミッションの下、一人ひとりにとって本当に選んでよかったと思えるマッチングが大量に生まれていくというプラットフォームを作り、まずは依然としてCXをおろそかにするプレイヤーの残る採用の市場を塗替えたいと考えている。